53歳男性、余命半年。
病院の前に立っていた。
その日、病院の玄関前で立ち尽くしていたのは、余命半年と宣告された五十三歳の男性だった。
そこで彼は、介護福祉士・岡本と出会う。
主治医に怒られていた男
最初に目に入ったのは、先生に強い口調で責められている男性の姿だった。診察室の前、少し開いたドアの隙間から、その空気が溢れ出ていた。
「このままでは、本当に半年もたないよ。」
男性はうつむいたまま、小さな声で答えた。
余命半年。
それでも彼は、治療を選ばず、現場に立ち続けていた。
「仕事をしなきゃ、食べていけない」
話を聞くと、男性は警備会社で働いていた。
会社の寮に住み、夜勤も含めてシフトを回している。
体はもう悲鳴を上げている。それでも、仕事を手放すという選択肢が彼にはなかった。
今ここを辞めたら、帰る場所も、お金もないんです。」
寮の部屋を片づけるお金もない。
退去したくても、動き出せない。
「この人、俺が引き取ります。」
そこで、岡本は腹をくくる。
この方、余命半年のがんの末期です。
ここから先の生活は、俺が引き取ります。」
警備会社に事情を説明すると、意外なほどあっさりと了承が出た。
問題は、次だった。
紹介状を書かない主治医と、ブチギレた介護福祉士
岡本は、男性を地域で支えるために、病院の先生に紹介状を書いてほしいと頼んだ。
しかし返ってきたのは、首を横に振るだけの返事だった。
こちらの方針に従わない患者さんに、責任は持てませんから。」
その瞬間、堪えていたものが切れた。
命のカウントダウンが始まっている患者を前に、
誰がどこまで責任を持つのかの押しつけ合いをしている時間はない。
しばらくして、騒ぎを聞きつけた院長が出てきた。
状況を説明すると、静かにうなずき、こう言った。
介護申請、生活保護、デイサービス、そして保険外の4ヶ月
そこからは、一気に動いた。
介護保険の申請。生活保護の申請。
デイサービスの利用調整。そして、制度に乗り切らない部分は、保険外サービスで埋めた。
男性は、デイサービスに通いながら、岡本のチームとともに暮らしを立て直していく。
寮ではない、自分のための生活。
その時間は、たった四ヶ月だった。
「ありがとう。楽しかった。」
亡くなる少し前、男性はベッドの上で、かすれた声を振り絞った。
それは、長い人生の中でどれだけ言う機会があったかわからない言葉だったかもしれない。
余命半年と告げられ、仕事にしがみつくしかなかった五十三歳の男性。
その最後の四ヶ月は、
「本当に自分のための生活」を取り戻した時間だった。
それは、ぎりぎり間に合った物語だった。
誰か一人でも「もうええわ」と叫んで動いたとき、
救われる命がある。
WEB ART STORIES 編集室

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